第5回全国市議会議長会研究フォーラムin大分
1.概要
2010年10月20、21日 大分市 iichiko総合文化センター
第1日目
基調講演 「衆議院議長を辞めて昨今思うこと」 前衆議院議長 河野洋平氏
パネルディスカッション「地方議会のあり方〜定数・報酬はどうあるべきか〜」
コーディネーター 法政大学法学部教授 廣瀬克哉氏
パネリスト 明治大学政治経済学部教授 中邨 章氏
駒澤大学法学部教授 大山礼子氏
日本経済新聞社論説委員 谷 隆徳氏
大分市議会議長 仲道俊寿氏
第2日目
課題討議
コーディネーター 中央大学大学院公共政策研究科客員教授 辻山幸宣氏
1「政治倫理条例について」
報告者 かほく市議会議長 杉本成一氏
佐賀市議会議長 福井章司氏
2「議会の調査権について」
報告者 稲城市議会議長 川島やすゆき氏
飯田市議会議長 中島武津雄氏
以下、文責は内田俊英にあります。
○65歳で息子から肝臓を移植。今年8年目。
その間、衆議院議長を6年間務めた。
○国会の締めくくりに請願審査があり、受けるものと断るものを分ける。個人のものは多いが
市議会からのものは少ない。
国と市との連携や協力がもっとあっていいのではないか。
○国会決議は「やりっぱなし」という印象だ。内閣による制約など、実効性があるものにすべきだ。
○ガソリン暫定税率のときのエピソード。
ねじれ国会は困ったものだが「困った」で終らせず、70点で歩む「話し合い」で成果出す努力が
必要だ。それこそが難しいことだ。
クリントン大統領も中間選挙で議会とねじれたが、それでもクリントンは成果をあげた。
ミッテラン大統領もシラク首相とねじれたが、大統領が外交を、首相が内政をと住み分け、
バランスと知恵とでやっていった。
「ねじれ」が必ずしも頭を抱えることではない。
地方自治体では、首長が市民の人気を背景に、議会で押し通そうとする。これに議会が賛成して
ばかりいては、その存在意義が薄れるだろう。
○昨今、国会は世論、支持率に一喜一憂するようになった。
テレビニュースで一日で変わる。
軽視はできないが、掘り下げて考えることが必要だろう。
地方議会は首長に、どこが民意に沿っていてどこがいけないかを言う立場だ。
○日本には「強いリーダー」を求める気風があり、戦前はそれで失敗。
「豪腕」に期待する風潮があるが、地方では強い首長を無条件に肯定すべきでない。
どこまでも話し合っていくのが民主主義だ。
オランダ、ベルギーなどでは選挙後、組閣まで数ヶ月をかける。その間、じっくり政策の擦り合わ
せ。そのほうがまちがいがない。
09年のGDPランキングで見ると、ルクセンブルク、ノルウェー、スイス、デンマーク、オランダ、
フィンランド、スウェーデン、ベルギーと続き、リーダーが強くない国が並んでいる。日本は17位。
辛抱強く話し合う、その気風が日本にもっと必要だ。
3.パネルディスカッション「地方議会のあり方」
○廣瀬 議会「節約」の時代から議会「改革」の時代へ。
今日付けの新聞で会津若松市の議会の取り組みが紹介されていた。
100ページに及ぶ議会報告書。来月、市民との意見交換会を行う。
年に20回に及ぶ議論を経て、市民に向かう「攻めの姿勢」。
さて昨今の「首長vs議会」の対立構造について、コメントを。
○谷 阿久根市長に対し市民は「やり方は悪いがやっていることは正しい」と。
名古屋の件は、当初の「減税」論議から論点が「議員報酬」にシフト。
都内に住むある有識者が「なぜ東京には都議会と区議会があるのかわからない」と
言っていた。今の流れ、議会への空気は「人を減らせ、カネを減らせ」だ。
これを変えるには議会が本気でやらねばならない。
報酬も定数も、議会が決めることではなくなった。市民を巻き込む議論の時代に。
○仲道 ちょっと会津若松市に先を越されたが大分市議会も市民との語る場を持つことに
している。
7人×4委員会=28人と議長で29人が必要、と見積もった。
国会議員は120名を削減すると、100〜300億円の効果があるというが、市町合併
により、すでに地方議員では1100億円の削減が実現している。
一方で由布市では、市民とのフォーラムを通じ、市民の側から「1万円アップ」が実現。
○大山 イギリスに滞在。民主主義の先輩ではあるが09年5月、ロンドンでは地方議員の手当
て不正使用問題が出て、国民の信頼は失墜していた。ある意味、日本よりもひどい状況
だった。
英国下院議員の歳費は低いが、そのためさまざまな手当てで生活費を穴埋め。地方
出身議員は地方と首都での二重生活のための手当てを要求。それでシャンデリアや
ガーデニングに支出して問題に。
しかしここからが日本と英国で違う。
日本ではすぐに手当てカットとなるが、イギリスでは「手当ては正当」、払っただけの仕事
はしてもらう、という考え方で、冷静な議論が行われていた。
英国の総選挙でも国会議員定数削減は問題となったが「半減」などという議論はない。
日本はどうしてこうも極端なのか。
日本では、議員を自分たちの代表と思ってない。ここが問題だ。
○中邨 イギリスの市議会議員の報酬は1日5000円。
名古屋では年収1600万円をいきなり800万円にと言っているが、外国との安易な比較は
不毛だ。
3R。外国の地方議員の報酬が低い理由。
ラディッシュ、ごみ。ロード、道路。レート、税率。外国の地方議員はこれだけにしか関わ
っていない。
議会での議論は、ゴミ収集日を月・水から火・木にしようとか、回り方を、時計回りから
反時計回りにしよう、とか。アメリカでは弁護士や保険代理人が務める。
一方、日本では365日、議員活動。いつも黒いネクタイを車に積んでいる。
市議会議員をやっている教え子と話していたら彼のケータイが鳴った。ある高齢の市民
から「台風は来ますか」という問合せだった。これが日本の地方議員の姿だ。
しかし議員の皆さんも悪い。
議会だよりを定例で出しているような国は日本だけだ。でも、読まれもせずに「ちり紙交換」
に出されるような内容だ。もっとラディカルな創意と工夫が必要だ。
○廣瀬 日本の地方議会・議員は市民に理解されないまま、仕事は知られないまま黙々と遂行。
美しくも、追い込まれているのが実状。
さて市民との対話を行っている議会では、それによってどう変わったのか、発言を。
○仲道 大分市議会では3年前に初開催。市内13の公民館。議会基本条例案提示に限定した
テーマで開催。
続いて「子どもを守る条例」案試案を提示。それまで高齢者の自治委員の参加が多かっ
たのに対し、この回からは若い人が圧倒的に増えた。
開催の周知のために議員全員が辻に立ち、ポケットティッシュを配布。
その場で出た意見はすべて、各委員会に振り分け、検討する。
これ以外に、13公民館以外へも出向いて意見を聞く、議員全員で作る「政策研究会」も。
○大山 議会からの情報発信が、日本の地方議会はあまりに少ない。
ホームページなどは「空虚」と言える。ホームページに情報がないということは、その議会に
情報がないということだ。
○中邨 フランス、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本を比較して、「政治への信頼」の度合いを調査
した表(パワーポイント)。程度の差はあるがどの国も「信頼しない」が「する」を上回る。
「公務員への信頼」の項目でも、フランス以外の各国が「信頼しない」が上回る。つまり、
各国民とも「政治も役所も信頼しない」と出た。
しかしながら一方で、「ではどうしますか?」と尋ねると、日本以外の各国民は「自治体に
頼らない。自分でやる」との声が上回る。日本のみ、悪口を言いつつ「行政がやるべき」。
「行政は何をやっているんだ」=みのもんた症候群。でも自治体に頼っている。
「信頼する」のと「頼っている」のとは異なる。
暴論を覚悟で言うが、もし議員報酬を選挙得票数×10円、などとすれば、住民はこっちを
向くだろう。
○廣瀬 不満は言うけれども最後は行政に何とかしてほしい日本。
○谷 市民と利益誘導でつながっていた、これまでの地方議員。これが壊れた。
住民から見ると、利益なき議員を支持する理由がない。
議員の役目は変わってきたのではないか。
これからは市民に説明することも議会の役割だ。
市民から見れば議会も遠い、役所も遠い存在だ。
市民との懇談会を持ちつつ、「おまかせ民主主義」を脱するには「住民投票」が効果的。
「仕掛け、問いかけで市民の意識革命を」
名古屋の件も、こうなる前に住民投票をしていれば、このようにはならなかったのでは?
栗山町議会への町民の信頼は、合併議論に際し、@合併した地を視察した A栗山町と
の合併候補町の財政状況を分析し、町民に報告した。このことから町民は「議員がよくや
ってくれている」。それが「だから議員に任せる」ということになったとき、議員は「それは
ちがう」と言った。お任せではなく、住民投票へ進んだ。
○廣瀬 議会の「基本構造について」タタキ台資料をもとに、「多人数議会モデル」「議員内閣モデ
ル」などを検討。
○中邨 制度改革のみで良くなる保証はない。
議員内閣モデルについて、問題は、行政と政治の分離こそが戦後最大のポイントだった
ことを想起してほしい。あらぬ方向に行く心配があるのではないか。
米国大恐慌で大失敗の例あり。
むしろ首長と議会との対立構造を作るために、議会事務局、シンクタンク強化の方策を。
装置の設計が必要だ。
○大山 制度改革に陥るな。
制度改革は「青い鳥」。現行制度、例えば百条調査などきっちり使うべき。
パブコメも市役所だけでなく議会もきっちりやれ。
女性議員が少ないのは困ったことだ。
○谷 純粋分離型を目指すべきだ。
条例制定権、予算提出権、編成機能も、今は中途半端だが議会に持たせるべき。
議会のあり方を自治体ごとに、議員が討議できる姿に。
人口少なく純粋分離型が無理ならば、兼業議員参加型も選択の一つに。
○仲道 私たち大分もひとつのモデルになればと思う。1700自治体それぞれのスタイルが選択
可能になればいい。議会と住民が語らいながら。
4.課題討議
1.政治倫理条例について
○杉本 かほく市の政治倫理条例の特色を説明5.感想
「議会報告会を通じて議員の質を高め、市民の理解を深める」。
2日目の中島・飯田市議会議長のこの言葉に象徴される、今年のフォーラムであったと思います。
二元代表制を取るわが国の地方制度で、戦後今日まで首長と議会の対立はあまり話題とならな
かったと思いますが、ここにきて一部にその対立が表面化し、社会問題化に拡大する様相です。
事情はそれぞれではありますが、市民が全般的な不況と不満感の中で地方行政に注目しはじ
め、それへの満足度が決して高くない日本の地方制度に、大きなクレームが投げられている、そ
んな情勢下の今回のフォーラム。先進地の報告に「すごいね」ではすまされない、深刻で切迫感
のある雰囲気で開催されました。
特に1日目のパネルディスカッションは出色で、地元大分の議長さんからロンドンでの見聞も詳し
い先生まで、多角的、多様な発言。
「何かと『外国の地方議員はボランティアだ、日本もそうすべきだ』との声が上がるが、仕事の
内容がまったく違う」
「私の教え子が市議会議員をしているが、先日彼と話していると彼に電話。何かと思ったら高齢
者から『台風は来ますか』という問合せだった」
「ある議員はいつも車に黒いネクタイを積んでいる」
これは私もそうであり、心当たりのある人も多いらしく、会場内には苦笑いが。
しかし一方で、「届いたら開かれることもなく『ちり紙交換』に出されるような、面白くもない議会だ
よりを出してよしとしている議会の側にも責任がある」とも。
議会事務局を理事者から独立強化することで議会の諸能力を高め、また議会だよりも充実させ
る。それは正しく大きな理想ですが、現実には事務局の担当者から「ページを増やす予算はあり
ません」と言われるとしょぼんと議論が途切れてしまう…申し訳ないですが、それがこれまでの議
会のいつわらざる実状だったと思います。
私はこのフォーラムの後、ある会合で市民の方に、「皆さんは議会だよりが来たら開いてます
か?」と、おそるおそる聴いてみました。答えは、
「ウチダさんが載っとるか、探してみよるがな」
この一言を、決して私は将来も、忘れないだろうと思います。
市民の期待に応える議会。いつまでも「ウチダさん支持」に甘えるのでない、信頼される議会。
それを実現しなければ、いつかは「議会はもういらん」と、言われる日が来るでしょう。
「言いっぱなしの議会から責任を持つ議会へ」と、稲城市の川島議長。
国で、そして全国各地で、わが公明党がキャステングボートを握る情勢が続いています。わが丸
亀市にあっても、私の存在がありてこそ議会が良くなったと、そう評価される行動を起こしてまいり
たい。